「中四国だより」 207号
"Bulteno de Tyu^goku kaj Sikoku" n-ro 207
la 3an de oktobro 2002
*** エスペラント、世界連邦運動につなげよう ***
エスペラント、世界連邦運動につなげよう〔二〇〇二年(平成十四年)十月四日、朝日新聞「私の視点」関西版〕
大本エスペラント普及会理事・世界連邦運動協会執行理事・スワニー(香川県白鳥町)社長、三好鋭郎(えつお)
「あなたたちの活動は間違っている」。七月、ロンドンで開かれた世界連邦運動の大会で、連邦運動のアメリカ代表がエスペラント運動のメンバーに向かって言い放った。三十六カ国から二百五十名が参加した世界連邦運動の今夏の大会で初めて、エスペラント語をめぐるセミナーが開催された。
「国境をなくして世界を一つに」をめざす世界連邦運動。「言葉の壁をなくすには世界共通語を」と叫ぶエスペラント運動。世界平和を希求する理念は同じなのに、活動は別々。私のように両方に携わるのは少数で、英語圏主導型の連邦運動では、英語以外眼中にないのが大勢だった。
セミナーには十五名のエスペランチストと四十五名の連邦主義者が参加。まず、長年二つの運動を続けるアメリカ・南イリノイ大学のグロソップ教授が「エスペラントを世界連邦と関連づけてこそ、突破口が開かれる。それ以外に未来の希望はない」と基調報告した。
「なぜエスペラントを大会で採用できないのか」と現地のエスペラント(編集者注:エスペランチスト?)が問いただす。元下院議員のイギリス人連邦派は「この会は英語のできる人ばかりが参加している。わざわざエスペラントに訳す予算がない」と答えた。「通訳の費用が要らないのがエスペラント」と他方は反論する。
「この会は英語を母国語にしている人たちに牛耳られている」とノールウェーの代表がいい、日本代表も「日本から四十人近くが参加したが、英語中心の大会に嫌気がさしてパリに観光に行った人もいる」と暴露した。
翌日の決議文起草委員会では四名のエスペランチスト、五名の連邦主義者、七、八名のオブザーバーが席につき、私も末席をけがした。「エスペラントは作られた言葉だからダメ」というイタリアの委員に「英語もドイツ語も先祖が作った言葉。エスペラントのどこがおかしいのか」と反論するイギリス人委員。元世界銀行幹部のアメリカ人委員は「今さら新しい言葉を勉強するなんて」と既得権を振りかざす。前夜の議論が再燃して数行の文章を作るのに一時間半かかった。
私は「エスペラントが世界共通語になれば、英語圏の人も勉強しなければならなくなり、言語の平等性が保たれる。われわれ非英語圏にとっても、エスペラントは英語よりはるかに学びやすい。多言語の欧州連合(EU)では通訳や翻訳費に膨大なカネを浪費しているが、共通語が人類全体に広がると経済効果は計り知れない」と持論を述べた。そしてついに「連邦主義者はノン・ナショナル・ランゲージ、エスペラントを勉強する」との一文が決議文に入れられた。
「英語が国際語だという人たちの傲慢な態度、非英語国民に対する配慮のなさをみて憤りを隠し得ない。エスペラントの重要性を痛感した」といったエスペランチストのイギリス青年が忘れられない。
日本でも英語を第二公用語に、などの主張があるが、とんでもないことだ。英語中心主義の深刻な差別性に速く気づき、自国語とエスペラント語という言語政策にかえるべきだ。今のままでは世界中が英語だけになってしまう。日本語だって危ない。